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【暗号化方式解説 第一弾】共通鍵暗号を徹底解説:初心者でもわかる仕組みと代表的な暗号方式

執筆者の写真: ざっきーざっきー

以前ご紹介した暗号化の基礎知識では、データを安全に保護するための暗号技術の全体像をかいつまんで解説しました。今回のブログは二部構成で2つの暗号化方式(共通鍵暗号と公開鍵暗号)について掘り下げた話をお届けします。

第一弾は、共通鍵暗号についてです。共通鍵暗号は、現代の情報社会で数多くの場面に用いられる暗号化技術で、ネットワーク上の通信やファイルの保護などで非常に重要な役割を果たしています。本記事では、初心者でも理解しやすいように、実際に使われている代表的な共通鍵暗号の種類や暗号化のモードについて、できるだけやさしく解説していきます。


共通鍵暗号とは?

共通鍵暗号は、暗号化と復号どちらにも同じ鍵を使う暗号方式のことです。たとえば、パスワード付きのZIPファイルを作る場合、データをパスワード(これが鍵の役割)で暗号化して、解凍するときにも同じパスワードを使いますよね。まさに、共通鍵暗号はこのような仕組みです。


一方、公開鍵暗号(パブリックキー暗号)では、暗号化と復号に異なる鍵を使います。共通鍵暗号と比べると、公開鍵暗号は通信相手と鍵をやりとりする手間を減らせるというメリットがありますが、暗号化速度が遅いという弱点もあります。そのため、実際のシステムでは、高速で効率的な共通鍵暗号が多く活用されることが多いです。


共通鍵暗号の安全性

【メリット】

共通鍵暗号の大きなメリットは暗号化が高速であることです。動画や大量のファイルデータなど、サイズの大きなデータを暗号化するときにも、高速で処理できる利点があります。


【デメリット】

一方で、送受信者同士で同じ鍵を安全にやりとりするための鍵配送が課題となります。もし第三者に鍵が知られてしまうと、暗号文が解読されてしまう恐れがあるため、鍵を絶対に漏らさない工夫が重要です。さらに、多数の相手との通信がある場合には、その人数分だけ鍵を管理する必要が出てくるため、管理が複雑化しやすいというデメリットもあります。


共通鍵暗号は、大きくストリーム暗号ブロック暗号に分けられます。ここからは、それぞれの特徴や代表例を紹介します。



ストリーム暗号

ストリーム暗号は、データを**連続的なストリーム(流れ)**として処理しながら暗号化する方式です。データがビットやバイト単位で絶えず流れてくるときに適しており、リアルタイム通信などでよく利用されます。


代表的なストリーム暗号の例

  1. RC4

    かつては広く使われていたストリーム暗号の一つです。動作がシンプルで実装が容易なため、無線LANのWEPなどにも採用されていました。ただし、現在ではRC4に脆弱性が発見され、推奨されない暗号方式となっています。


  2. Salsa20/ChaCha20

    Googleなどで採用されている高速かつ安全性の高いストリーム暗号です。RC4を置き換える用途として近年注目されています。TLSの一部モードでも利用され、多くのエンジニアに支持されています。


ストリーム暗号のメリット

  • リアルタイム性が高く、大量のデータを連続的に暗号化しやすい

  • 容易に実装できるものが多い


ストリーム暗号のデメリット

  • 同じ鍵で繰り返し利用すると弱点が出やすいため、初期化ベクトル(IV)や乱数の品質をしっかり管理する必要がある

  • 暗号アルゴリズムによっては、平文の一部が漏洩しやすいリスクがある


ブロック暗号

ブロック暗号は、データを一定のブロックサイズ(例えば128ビットなど)に分割してまとめて暗号化する方式です。複数のブロックをどう扱うかによって暗号化モード(ECBやCBC、CTRなど)を選択します。


代表的なブロック暗号の例

  1. DES(Data Encryption Standard)

    1970年代にアメリカ政府が標準化した暗号方式です。歴史的に重要ですが、鍵長が短く安全性に問題があるため、現在では推奨されません。


  2. 3DES(Triple DES)

    DESを3回繰り返すことでセキュリティを強化した方式です。古い環境ではまだ使われていることもありますが、処理速度が遅く、将来的には廃止が進むと考えられています。


  3. AES(Advanced Encryption Standard)

    ほとんどの現代のシステムや標準規格が採用している暗号の一つがAESです。米国政府によって次世代の暗号標準として選定され、現代では「AES-128」「AES-192」「AES-256」といった鍵長を切り替えて、さまざまなセキュリティレベルで利用できます。 AESはブロック暗号方式であり、現在の多くの暗号化システムの基盤になっています。高速で安全性も高いため、今後も幅広い分野で活用されるでしょう。


ブロック暗号を利用する際、ブロック長よりも長いメッセージを暗号化する場合に暗号化モードを利用します。


暗号化モードの例

  • ECB(Electronic Codebook)モード

    ブロックごとに独立して暗号化を行うモードです。単純ではありますが、同じ平文ブロックが何度も出現すると暗号文も同じパターンが繰り返されるため、セキュリティ上の問題が起こりやすいとされています。


  • CBC(Cipher Block Chaining)モード

    直前の暗号文ブロックを次の暗号化に活用し、チェーンのようにつなげていくのが特徴です。これにより、同じ平文が連続しても同じ暗号文にはならないため、ECBの弱点を克服しています。


  • CTR(Counter)モード

    カウンターを利用してストリーム的にブロック暗号を実現する方式です。ブロック暗号でありながら、ストリーム暗号的な動作が可能である点が注目され、並列処理にも適しているので高速に暗号化・復号できます。


これらのモードはそれぞれに特性があるため、利用する状況によって使い分けられています。セキュリティレベルや処理効率などを総合的に考慮して選ぶのが一般的です。


まとめ

今回は、共通鍵暗号の定義や仕組み、安全性、そしてストリーム暗号・ブロック暗号の違いから具体的な暗号方式(DES、3DES、AES)まで、広く解説しました。共通鍵暗号は、鍵をやりとりする手間こそあるものの、高速に暗号化できる点が大きな魅力です。


現代のセキュリティ対策では、AESのような安全で汎用性のある方式と、適切な暗号化モード(CBCやCTRなど)を組み合わせることが重要です。また、鍵管理を徹底しないと暗号そのものがいかに強力でも意味がないので、鍵の安全な保管・配送方法を常に意識しておきましょう。


今後も暗号技術は進化していきますので、引き続き関連する情報を収集し、より確実なセキュリティ対策を行ってください。これからも暗号化の世界を探求することで、データやプライバシーを一層強固に守れるようになります。暗号化を正しく使い、安心できるデジタル環境を築いていきましょう。

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