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BGPで広報されているIPv4アドレスの経路数が百万経路を突破したことについて

  • 執筆者の写真: ケイゴ
    ケイゴ
  • 5 日前
  • 読了時間: 3分


2025年、インターネット業界で大きな節目を迎えました。インターネットの世界では、各通信事業者が相互に接続するために BGP(Border Gateway Protocol) というプロトコルを利用しています。BGPを通じて各社が所有するIPv4アドレスの経路を交換することで、世界中の通信事業者同士がつながり、グローバルな通信が可能になっています。

そのBGPによる経路交換の総数が、2025年ついに「百万経路」を突破しました。この記事では、その背景や増加の理由を整理するとともに、ネットワークエンジニアとして私自身が感じた思いをお伝えしたいと思います。




IPv4アドレス枯渇と各NICの停止日

インターネットで通信をするためにはIP Addressを使います。現在多くの場面で利用されているIPv4アドレスはNIC(インターネットに係るリソースを管理する組織)から新規アサインは行われず、枯渇している状態です。

以下が各地域での枯渇日です。

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IPv4アドレスの新規アサイン停止日

APNIC(アジア)

2011年4月15日

RIPE NCC(ヨーロッパ)

2012年9月14日

LACNIC(中南米)

2014年6月10日

ARIN(北米)

2015年9月24日


百万経路突破の確認

経路数は測定する組織や方法によって若干異なりますが、2025年に入ってから複数の測定サイトで「百万経路」を突破したことが確認されました。例えば有名なサイトだと以下で観測が可能です。

主な観測サイト

・Routing Table Analytics: https://thyme.apnic.net/



年次データと伸び率

下記はAPNICの公開データ(https://thyme.apnic.net/)を参考にして、2000年から5年毎のBGP経路数をグラフ化したものです。毎年の伸び率は緩やかになっているものの着実に経路数は増えており、今年2025年に百万経路を突破したことが確認できます。


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IPv4枯渇後も経路数が増え続ける理由

IPv4アドレスの新規割り当ては停止していますが、BGP経路数は増え続けています。その主な要因は以下の通りです。1. 既存のアドレスの返却や売却により、他組織に再利用される。2. 節約のため、より細かく分割して利用されるケースが増えた。3. レガシーアドレスブロックが細分化されて利用されるようになった。4. ピアリングやトラフィックエンジニアリングにより細かな経路制御が必要になった。5. 測定技術の向上により、これまで見えなかった経路が観測されるようになった。



筆者がインターネットに係るようになってからの比較

私がIIJに入社した2008年当時、BGPの経路数はおよそ二十万規模でした。ところが2025年9月には「百万経路」を突破しており、この間に実に約5倍もの経路が増加したことになります。増加率としては500%を超える成長であり、インターネットの拡大を象徴する数字だといえるでしょう。入社当時はすでにインターネットの市場は十分に成熟しているように思っていましたが、現在の経路数を振り返ると、その規模はまだ発展途上にあったのだと実感します。

また当時IIJで利用していたルーターは、数十万規模のIPv4経路しか扱えない仕様であり、経路数の増加に伴って機器をリプレースしたことを思い出します。さらに本体価格も今より高価であったと記憶しており、インターネットの進化にあわせて私たちが扱うハードウェアも絶えず発展を続けてきたのだと感じます。

BGPが世の中に発表されたのは1989年(RFC1105)、IPv4アドレスが発表されたのは1981年(RFC791)です。40年以上の歳月が経過しているにもかかわらず、両者が今なお世界中のインターネットの基盤として利用されていることは、当時の仕様がいかに周到に設計されていたかを物語っています。そしてその先見性に、業界の先人たちへの深い敬意を抱かずにはいられません。



おわりに

百万経路を超えたという事実を目の当たりにし、長年ネットワーク運用に携わってきた私としては胸が熱くなります。IPv4の枯渇という現実の中で、なお進化を続けるインターネットの姿に感慨を覚えるとともに、今後も責任を持って運用に取り組んでいきたいと強く感じています。


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