top of page

【暗号化方式解説 第二弾】公開鍵暗号の基本から最新動向まで-初心者でもわかる仕組みと攻撃手法の対策-

執筆者の写真: ざっきーざっきー

以前の記事では暗号化の基礎について説明しましたが、今回のブログは二部構成で2つの暗号化方式(共通鍵暗号と公開鍵暗号)について掘り下げた話をお届けします。

第一弾は、共通鍵暗号についてお話しました。

第二弾の今回は、公開鍵暗号について解説していきます。公開鍵暗号は、現代のセキュリティ対策に欠かせない仕組みであり、インターネットを利用する際の通信保護や電子署名など、多くの場面で活用されています。できるだけ専門用語を抑えながら、初心者にもわかりやすいようにまとめていきます。


公開鍵暗号とは?

公開鍵暗号は、暗号化と復号に異なる鍵を使用する仕組みです。具体的には、暗号化するときに使う「公開鍵」と、復号するための「秘密鍵」のペアを用意します。公開鍵はその名の通り誰でも手に入れられるように公開されており、秘密鍵は自分だけが厳重に管理します。


たとえば、誰かに暗号化したメッセージを送りたいときは、その人の公開鍵を使ってメッセージを暗号化します。すると、受け取り側は自分だけが持つ秘密鍵で復号できるため、盗聴されてもメッセージを読まれてしまうことはありません。


これとは逆に、共通鍵暗号では、同じ鍵で暗号化と復号を行うため、双方が同じ鍵を安全に共有する必要があります。この鍵配送が大きな課題ですが、公開鍵暗号ではそこがよりスムーズに行える点が画期的といえます。


公開鍵暗号の安全性

【メリット】

公開鍵暗号の最大のメリットは、鍵配送が比較的容易なことです。公開鍵は誰が取得しても問題なく、秘密鍵は自分一人で保持していれば十分という考え方が成り立つからです。たとえば、Webサイトの運営者がサーバーに公開鍵を用意しておけば、そのサイトにアクセスする人が自由に公開鍵を使って通信内容を暗号化できます。


【デメリット】

一方で、公開鍵暗号は暗号化や復号にある程度の計算負荷がかかります。共通鍵暗号に比べると処理が遅くなるため、大量のデータ通信にすべて公開鍵暗号を使うのは非効率的です。実際のシステムでは、まず公開鍵暗号で共通鍵を安全にやりとりし、その後は高速な共通鍵暗号で本体のデータをやりとりする「ハイブリッド方式」がよく用いられています。



代表的な公開鍵暗号方式

  1. RSA

     公開鍵暗号の代表格として知られています。大きな整数の素因数分解が難しいことを前提とし、鍵長は2048ビットや4096ビットなどの大きなサイズが使われます。銀行や電子商取引など、さまざまな場面で広く採用されています。


  2. ECC(楕円曲線暗号)

     ECCは楕円曲線の数学的な性質を活用した暗号方式で、RSAよりも小さな鍵長で同等以上の安全性が期待できます。また計算量も比較的少なく済むため、スマートフォンなどリソースが限られた環境にも向いています。


  3. ElGamal暗号

     離散対数問題をベースにした暗号方式で、DSA(Digital Signature Algorithm)などに応用されています。RSAほどメジャーではないものの、学習や研究の分野ではよく例として登場します。


  4. DSA(Digital Signature Algorithm)

     アメリカ政府の標準署名方式として利用されることが多い仕組みです。暗号化というよりは電子署名専用に設計されています。



公開鍵暗号に対する攻撃手法

公開鍵暗闘に対する攻撃手法について具体的な事例を見ていきましょう。

  1. 素因数分解攻撃

    多くの公開鍵暗号方式では、大きな数の素因数分解が非常に難しいことを安全性の基盤としています。RSAなどでは大きな数を因数分解する作業がほぼ不可能なほど時間がかかるため、現実的な攻撃は難しいとされています。しかし、将来的に量子コンピューターなどが実用化されて性能が飛躍的に向上すると、一部の公開鍵暗号が脆弱になる可能性が指摘されています。


  2. 中間者攻撃(Man-in-the-Middle攻撃)

    攻撃者が通信の中継点に入り込み、通信内容を改ざんする攻撃手法です。攻撃者が偽の公開鍵を渡したり、鍵交換のプロセスを乗っ取ったりすることで正規の通信を盗聴・改ざんする可能性があります。これを防ぐためには、デジタル証明書などを利用して公開鍵の正当性を証明する仕組みが不可欠です。


  3. 鍵生成や管理ミス

    公開鍵暗号そのものが安全であっても、秘密鍵の管理がずさんだったり、乱数の生成が不十分だったりすると安全性が大幅に下がります。セキュリティ対策では、どの暗号方式を使うかだけでなく、運用や管理を適切に行う点も重要です。




運用時に気をつけるポイント

  1. 鍵の長さの選定

    安全性と処理性能のバランスを考え、RSAなら2048ビット以上、ECCならカーブの種類を慎重に選ぶなど、セキュリティ水準に見合った鍵を使いましょう。


  2. 証明書の有効期限管理

    Webサイトに独自のSSL/TLS証明書を導入する場合など、期限切れの証明書を使わないように注意が必要です。


  3. 秘密鍵の取り扱い

    秘密鍵をUSBメモリに入れたままにしない、パスワードをかける、オフラインで厳重に保存するなど、管理は慎重に行いましょう。

まとめ

公開鍵暗号は「鍵配送の課題」を大きく解消した革新的な技術であり、現在もインターネットやセキュリティの世界で重要な役割を果たしています。特に、RSAECCなどは企業のオンラインサービスや電子認証システムに欠かせません。


しかし、どの暗号方式でも、攻撃手法運用上のリスクを理解し、鍵の管理を徹底しなければ、完全な安全性は保てません。今後の量子コンピューターの登場なども含め、新技術やガイドラインの動向をチェックしつつ、定期的に暗号環境を見直していくことが大切です。


これからも公開鍵暗号を正しく使い、より安心・安全なデジタル社会をに築いていきましょう。IIJ Americaへのお問合せはこちらのフォームにてお願いします。

Comments


bottom of page