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[Starlinkシリーズ♯3]StarlinkアンテナをNYからSanJoseオフィスへ移設してみた!

  • 執筆者の写真: IIJA Service Team
    IIJA Service Team
  • 6 分前
  • 読了時間: 5分

今回は、Starlinkシリーズ第3弾として、前回第2弾IIJ AmericaのNew Yorkオフィスで使ってみた!でご紹介した通り、弊社NYオフィスで利用していたStarlinkアンテナをSanJoseオフィスへ移設し、実際に設置して動かすまでをまとめました。



なぜStarlinkをSanJoseに?

NYオフィスは高層ビルに囲まれており、衛星通信に必要な「空が開けた場所」を確保できません。Starlink は設置環境に大きく依存するため、都市部では遮蔽物が多く不向きなケースが多いです。一方、西海岸は低層エリアが多く、空が開けているため Starlink との相性が良いと言えます。



SanJoseオフィスのビル構造

San Jose オフィスは 3階建てのビルで、オフィスは2階部分 にあります。


IIJA SanJoseオフィス
IIJA SanJoseオフィス


今回利用するStandardモデルの アンテナは、付属のStarlinkアンテナ ~ 専用ケーブル ~ ルーター と接続し、ルーターから電源供給されます。専用ケーブルは 最長45m(147ft)になるため、外壁にアンテナを付ける場合、アンテナ設置場所から設置場所までのケーブル長と、ルーター設置場所を考慮する必要があります。


ビル内のケーブル配線イメージ
ビル内のケーブル配線イメージ





45m制限が超えるとどうなる?(MDF中継構成)


Starlink ケーブルは延長できず、Starlinkルーターをケーブルの終端に直接接続する必要があります。もし 45m を超える場合は、

「ビル内の MDF (Main Distribution Frame) に Starlink ルーターを置き、MDF からオフィスはビルの LAN 配線を利用して延長する」という方法を取る必要があります。

MDF中継構成の図解
MDF中継構成の図解


MDFにルーターを置くデメリット

MDFにStarlinkルーターを置くと、以下のような問題が発生する可能性があります。

  1. セキュリティリスク

     ・MDFはビル全体の共有エリアで、物理的な施錠が甘いことが多い。

      ・第三者の出入りが可能なケースもあり、機器盗難リスクもゼロではない。

  2. 再起動やトラブルシュートが困難

     ・Starlink は再起動や電源抜き差しが必要になることがあるが、MDFは鍵付きで、

      ビル管理者に毎回開錠依頼する必要がある。

  3. 温度管理が不十分なことがある

     ・MDFはサーバールームほど空調が整備されておらず、高温や湿度が

      Starlinkルーターに悪影響を与える可能性がある。

  4. 管理責任の所在が曖昧

     ・ビル側の設備なので、異常があっても対応に時間がかかる。

 

企業利用としては、できれば MDFではなくオフィス内に機器を収めたい、というのが現実です。


San Jose オフィスでは中継なしで設置できた


事前の現地調査でケーブルルートを測定したところ、アンテナ ~ オフィス内ラックまで 45m以内に収まることが分かりました。そのため今回はMDFを経由せず、Starlinkルーター(PoE Injector)もオフィス内に設置するシンプルな構成で運用することができました。


この結果、

  • セキュリティリスクなし

  • トラブル時はすぐ自席から再起動可能

  • 工事工数も少なく済む

というメリットが得られました。



現地調査で確認したこと


ビルのレギュレーション確認

賃貸物件の場合、以下のビル固有のルールを確認する必要があります。

  • 屋上にアンテナを設置しても良いか

  • 屋上に穴を開けてるアンテナを固定することができるか、重りで固定する必要があるか

  • (アンテナ~オフィスまで45m以上距離がある場合)、中継拠点のマシンルームを利用できるか

  • ビル内の工事は、指定された工事業者を使う必要があるのか

    • 古いビルでは、そもそも新規の配線工事が禁止されているものもある

  • COIの提出が必要か

  • 工事をするのに、必要な手続きがあるか etc.

 

ケーブルルートの確認

アンテナからルータ設置位置までのケーブル長が、標準長ケーブル15m(50ft) 、もしくはオプションケーブル45m(147ft)以内で収まるか確認します。

ルーター設置場所がオフィスではなく、ビルのマシーンルームなどになる場合、マシーンルームからオフィス内の設置場所までのケーブル長と、ビル固有の配線ルールを確認する必要があります。


Starlink App による遮蔽物チェック

San Jose オフィス周囲が低層のため、NYとは違いほぼ完全に空が開けている理想的な環境でした。App上でも2拠点の違いは明確に出ています。


左:SanJoseオフィス/右:NYオフィス
左:SanJoseオフィス/右:NYオフィス

アンテナ固定器具選定


今回ビルディングのルールで、屋上に穴を開けることができないため、アンテナは重りを乗せて固定する方式のものを採用しました。公式サイトでは複数のマウントキットが販売されていますが、今回は通販サイトで下記タイプの固定器具を購入しました。

アンテナ固定器具イメージ
アンテナ固定器具イメージ



設置工事の流れ


アンテナの固定

前述の通り、ビルディングのルールで建物が不可のため重りでの設置となりました。

アンテナ設置場所
アンテナ設置場所



ケーブル配線の様子

ケーブル配線の様子
ケーブル配線の様子

室内のStarlink接続

電源投入後、数分で“Online”になります。

室内のStarlink機器
室内のStarlink機器

動作結果

スピードテスト

San Jose は Starlink 衛星のカバレッジが良く、非常に安定した値が出ました。

スピードテスト結果
スピードテスト結果


実際のアンテナ設置後


アンテナ設置した様子
アンテナ設置した様子


Starlink は都市部より郊外が向いている

今回の検証で改めて感じたのは、Starlink は都市部より郊外の方が圧倒的に性能を発揮するという点です。

 

以下の理由からSanJoseオフィスは非常に良好な通信環境でした


  • 建物の高さが低く、上空が開けやすい

  • 木が少ない地域では遮蔽物がほとんどない

  • 西海岸は太平洋側の衛星カバレッジが特に強い

  • 角度調整がスムーズで通信の途切れが少ない



まとめ

NYで使っていた Starlink を San Jose に移設してみた結果、

  • MDFを経由せず45m以内で設置できた

  • 遮蔽物が少なく安定した通信

  • 西海岸はStarlinkに非常に適した環境

  • 工事もシンプルで運用しやすい

という、非常にポジティブな評価となりました。

 

Starlink はバックアップ回線や現場系ネットワークとの相性が良く、今回の検証結果は今後のサービス展開に役立つ内容になったと思います。

今後もStarlinkに関する情報をアップデートいたします。

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